コラム

コラム「ねたきりにらなら連」

ねたきりになら連は1993年「徳島老人生活ケア研究会」の設立により誕生しました。
これからの高齢化社会の理想的な生き方を研究し、高齢者が「生き生きと健やかに老いる」ことを目標として、家庭に閉じこもりがちな高齢者の方々に日本の代表的なお祭りである「阿波おどり」に参加してもらおうという想いから誕生したねたきりになら連。
ここではねたきりになら連の設立趣意、徳島老人生活ケア研究会の想いを紹介致します。

阿波踊りと文化

「ねたきりになら連」顧問
大田仁史(伊豆逓信病院副院長)

この度の阿波踊りを応援してくださった皆様、ありがとうございました。ことに石川先生を委員長とする実行委員のメンバーには心から御礼申し上げます。おそらくどなたもあのさじき席のどよめきを聞かれたときには身震いするほど感動されたと思います。あの一瞬の感動を私たちは一生忘れないでしょう。この日にむけて、8か月にわたって準備のために重ねられた個々の人の時間、人を思う総和は膨大なエネルギーです。そのエネルギーは参加した老人たちと、その場に居合わせた全ての人の心にそそぎ込まれたに違いありません。
私はこの連はまず医療や保健、福祉にたずさわるものがしっかり結集し協力し合わなければできないことであり、またそれだけでも無理であると思っていました。ケアの専門集団に加え若いボランティアの力が絶対必要だと信じていました。この期待に想像以上に応え底力を発揮してくれたのが青年団の人たちでした。金久副実行委員長のもとで早朝から深更まで、いや明け方まで一糸乱れぬ行動をされる姿は感動的でした。これからの高齢社会を乗り切るには、この人たちの支援が強力な武器になるなることをイベントを通して象徴的に示されたように思いました。
今の日本は効率主義といわれています。効率を追い求めれば当然競争が生じます。競争社会では弱い立場のものと強い立場のものが生まれるのは仕方がないことです。しかし強いものが弱いものを抹殺してしまっては遺産は築かれません。もし文化というものを人々の人々の営みの歴史的集積の一つと考えるならば、立場が危うくなったものを強いものが庇護していくという考えが必要です。そうでなければ、次の世代という時の絶対的な強者が全てを抹殺しうるからです。文化の程度とは競争しながら競争の耐え得ないものをどれだけ大切に守れるかの度合いのように思えます。そして、人を大切に守るには、いのちを慈しむ、尊厳をまもる、共に心安らぐ、という三つのことが欠かせない条件だと私は思うのです。
今回の「ねたきりになら連」の活動を通してそれぞれの人が、それぞれの立場でこのようなことを考える機会を得たのではないでしょうか。
姓億名人率いる「新のんき連」に導かれ、青年団に後を守られた58台の車椅子、踊りつつそれを押す人、さじきの前で立ち上がる努力をした老人たち、それに拍手と声援を送った観衆。その渦のなかにいて私は阿波踊りには深い文化があると思いました。このイベントを通して得た感動を日常の活動につなげ、自分の心の中の文化を問い続けていきたいと思います。夏、暑い感動を本当にありがとうございました。

ノーマライゼーション

「障害者を施設に収容するのではなく、障害者が健常者とともに地域社会の中で普通の暮らしが出来る社会こそが本来のあるべき姿であり、若者も老人も、健常者も障害者も、ともに助け合い同じ地域に住めるように社会全体で条件を整えていくべきである」という障害者福祉を考える上での基本理念。この考え方は、1981年の「国際障害者年」を契機にひろく定着しつつある。
「障害は社会によって作られる」とか「ねたきりはねかせきりからはじまる」と言われるように、手厚く保護されているようでも、それが隔離や排除思想の上に行われていたのでは、あたりまえの人間として生きたい人を支えることにはならない。

「いつかは私も」と、お互いが自分のこととして、お互いの自立を支え合うことが重要だ。そして自立した人間同士がみんなで連帯してネットワークを広げていけば、ノーマライゼーションに基づいた地域ぐるみでの福祉が実現するのではないだろうか。

阿波踊りのパワー

阿波おどりを踊ったり、見たことがある人なら、この踊りが人々の気分を高め、興奮させる力を秘めていることを感じたことと思います。私たちは、障害を持った参加者の方々を見守りながら、このことを強く感じます。障害をもっていても阿波おどりを踊ることができるという自信でその表情は輝いています。「踊るなんてもう無理」というあきらめの気持ちから、「昔踊っていた阿波おどりをもう一度踊ってみよう」「一度でいいから踊ってみたい」という気持ちへの変化がもたらす表情の輝きです。その表情に引き込まれるようにわき上がる観客の声援、拍手が病院や家に閉じこもりがちな生活を忘れさせ、快い緊張感をもたらします。
普段よりも、腕があがる、立ち上がることができるといった効果も見ることができます。また同じ障害を持つ人達との交流によって、「みんなに出来るのなら私に出来ないはずがない」といった雰囲気も生まれてきます。
また、黄色と紫のあの「ねたきりになら連」の目のさめるような踊り浴衣も気分を引きたてるのに効果があると自負しています。身体の不自由な人が浴衣に着替えることは大変ですが、みんなが同じ浴衣を着てはじめて、阿波おどり を踊るという気合いも入るし、連帯感も生まれるのです。
訓練としてのリハビリは大変に感じるでしょうが、阿波おどりは 「訓練」と感じさせない楽しさと興奮をもたらします。
阿波おどりは不思議なパワーをもったおどりです。